キャピラリー電気泳動法
(Capillary Electrophoresis:CE)

原理

フューズドシリカキャピラリー管内に泳動液を満たし、試料溶液を注入した後、両端に電圧(-30~+30kV)を掛けて電気泳動を行うことにより、成分を荷電・大きさ・形などに基づく移動度の差異で分離する手法である。分離の方法にはいくつかのものがありますが、ここでは自由ゾーン電気泳動(free zone capillary electrophoresis)といわれる方式による低分子イオンの測定について記載する。
検出器にはUV/VIS吸光光度計(フォトダイオードアレイ)が用いられるが低分子イオンの多くはUV吸収を持たないため、UV吸収を持つ成分を添加した泳動液を用いて間接吸光法(目的成分を負のピークで検出)で検出する。泳動時間、ピークの面積により、各成分の定性・定量が行われる。
試料導入法としては落差法、加圧法、吸引法、電気的導入法がある。落差法は、キャピラリー管の片端を試料に浸して持ち上げることで試料を管内に導入する方法であり、極微量(数nL)の試料を再現性よく導入することができる。

装置模式図

溶液に電圧を掛けた場合、陽イオン成分は負極側に、陰イオン成分は陽極側に移動し、中性成分は移動しない。しかし、シリカ製キャピラリーを用いると、表面の負荷電によって電気浸透流が生じ、この電気浸透流は荷電した成分が正・負極に移動する速度より早いため、陽イオン→中性イオン→陰イオンの順番で負極側に泳動する。
陰イオンを測定する場合には、電極を逆転させる方法があるが、それだけでは電気浸透流が逆に流れるため、検出器の方向に成分は移動しない。そこで陽イオン界面活性剤を泳動液に加えることによって、シリカの表面を正に荷電させて電気浸透流を逆転させることにより、陰イオンを泳動・検出する。

電気浸透流

CEでは、水溶液中の塩化物イオン、フッ化物イオン、硫酸イオン、硝酸イオンなどの陰イオン(アニオン)、ナトリウムイオン、アンモニウムイオンなどの陽イオン(カチオン)、ギ酸などの低級有機酸、テトラメチルアンモニウムなどの低級アミン類を測定することができる。一般に、ICと比べて感度は劣るが、分離能は向上する。水以外の液体試料、気体試料、固体試料については、適切な前処理を行うことにより、測定することができる。

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