原子吸光分析法(Atomic Absorption Spectrometry:AAS)

原理

測定試料をフレーム中に噴霧または黒鉛炉内で加熱するなどして測定元素を原子蒸気化(原子化)し、これに測定元素特有の波長の光を透過させると基底状態の原子が光を吸収して励起状態に遷移する。この光の吸収(吸光度)から元素濃度を測定することができる。
基本的に装置への導入は希酸水溶液になる。固体試料は適切な試料前処理(技術要)により溶液化した後、測定に供する。通常、濃度既知の元素標準液により検量線を作成し、検量線法により定量を行う。
いくつかの原子化方法があり、測定元素、分析目的に応じて使い分けられる。

原子化

フレーム原子吸光法

試料溶液をアセチレン/空気などのフレーム中に噴霧して原子化する。NaやKなどを高精度で測定するのに適している。

黒鉛炉加熱原子吸光法(GF-AAS)

試料溶液10~80μLを黒鉛炉に注入し、乾燥後、2000~3000℃に加熱して原子化する。比較的共存物質の影響を受けにくく、 ICP-MSと同等の超微量分析を行うことができる。 ICP-MSでは難がある試料、元素の測定に威力を発揮している。

水素化物発生原子吸光法(HG-AAS)

試料溶液中のAs、Se、Teなどを水素化ほう素ナトリウム(NaBH4)で揮発性水素化物に還元し、これを加熱石英セルに導入して原子化する。水素化物を生成する元素に限られるが、高感度で測定することができる。

加熱気化原子吸光法(Hg/水銀)

固体または液体試料を燃焼管に入れて加熱し、Hgを気化させて金製の網で捕捉(金-アマルガム)した後、金製の網を加熱して再び水銀を遊離(原子化)してセルに導入する。Hgを高感度で測定することができる。

還元気化原子吸光法(Hg/水銀)

試料溶液に塩化スズ水溶液などを添加し、酸化還元反応によって生じたHgを金製の網で捕捉(金-アマルガム)した後、金製の網を加熱して再び水銀を遊離(原子化)してセルに導入する。Hgを高感度で測定することができる。

原子吸光光度計の模式図