マイクロプラスチックの分析

マイクロプラスチックの分析手法(迅速前処理と定性・定量)
RAT-MP法(Rapid Analysis Technique of MicroPlastic)によるマイクロプラスチック迅速前処理と定量・定性分析

■ はじめに

マイクロプラスチック(microplastics (MPもしくはMPs))は微細な合成樹脂であり、その由来の多くはプラスチックごみ(一次プラスチック)が環境中で小片化したもの(二次プラスチック)といわれています。小魚などがMPをエサと間違えて摂取することで、消化器官に物理的ダメージを与えることや、MPに吸着する高濃度の有害物質(環境ホルモンや残留性有機汚染物質(POPs))により生殖異常が生じることなどが報告されています。しかし、MPの拡散の規模については不明な点が多く、持続可能な目標(SDGs)等に対して有効な対策を講じるまでには至っていないのが現状です。そこで、水中MPのモニタリングデータを国家間で比較可能にするため、2015年にはアメリカ海洋大気庁が水中MPの標準的分析手法(※1)を作成し、2020年に環境省(日本)はこれを補足、補完したガイドライン(※2)を公開しました。但し、これらの分析法は完全なものではなく、更に改善すべき余地があるものでした。

■ マイクロプラスチック分析の理想的な前処理

マイクロプラスチック(MP)分析の前処理の目的は、採取した大量の粒子の中から、微細なマイクロプラスチックのみを探し集めることです。例えば、公園に生える無数の草の中から四葉のクローバーを漏れなく集めるのに等しい作業であり、非常に難易度が高い作業です。その前処理作業を、迅速に行えるのがRAT-MP法です。
上述した標準的分析法(以後、標準法と称す)の前処理法は、過酸化水素を用い天然有機物を分解しますが、比較的マイルドな分解のため、最終的に目視によるMPの選別作業が必要になります。目視選別は属人的作業で「見落とし(※3)」だけでなく「見間違え」のリスクが生じ、MP以外の粒子を機器分析に導入してしまうことで測定時間や装置への負担も大きくなります。
一方RAT-MP法は2種類の薬液(図ではAおよびB液と称す)を用いた処理法で、天然有機物を99.9%以上除去します(※4)。よって、目視による選別作業が不要になりました。また、除去効果は天然有機物に選択的で、MPの回収率は汎用的な5種類の合成樹脂で、80%以上であることを確認しました(※5)。更に、標準法で掛かる前処理日数4~6日程度を、1~1.5日に短縮できました。

RAT-MP法による模擬天然有機物(木粉・にぼし混合物)の除去の図
RAT-MP法による模擬天然有機物(木粉・にぼし混合物)の除去

RAT-MP法による汎用的材質のマイクロプラスチックの回収率の図
RAT-MP法による汎用的材質のマイクロプラスチックの回収率

■ TOC測定によるマイクロプラスチックの定量

RAT-MP法によりマイクロプラスチック(MP)の高回収率で迅速な前処理が可能になったことから、測定の幅が広がりました。
前処理後の残渣には天然有機物が無いことから、回収した粒子の全有機炭素量(TOC量)を有機元素分析計で測定することにより、マイクロプラスチックの概算定量が可能です。この方法は、複数種のMP混在下では成分ごとの定量はできませんが、標準法に比べ大幅な時間削減やコストダウンが見込まれることから、迅速対応が必要なスクリーニング調査や、定期的な排水管理、近年検討されている水中MPの除去プロセスの効果検証などに利用できます。

有機元素分析計によるTOC測定のイメージ図
RAT-MP法による汎用的材質のマイクロプラスチックの回収率
(TCD:熱伝導度検出器(Thermal Conductivity Detector))

■ 顕微FT-IRを用いた定性分析および粒径分布測定

PP、PU、PMMA、PETを粉砕した模擬マイクロプラスチック試料を作製し、顕微FT-IRを用いたプラスチック種の定性分析と粒径分布測定を行いました。IRイメージングでは、全てプラスチック種を定性することができました。また、粒子径分布測定では0.1~5000 µm全域をカバーするデータを取得できました。

正反射IRイメージング結果図
正反射IRイメージング結果

粒子径分布測定結果図
粒子径分布測定結果

粒子径分布に関するデータは、㈱堀場製作所「レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(LA-960V2)」を用いて得られたものです。
ご協力いただきました㈱堀場製作所 関係者様に深く感謝いたします。

※1
アメリカ海洋大気庁, 2015. Laboratory Methods for the Analysis of Microplastics in the Marine Environment.
※2
環境省, 2020. Guidelines for Harmonizing Ocean Surface Microplastic Monitoring Methods Version 1.1
※3
環境省の報告(※2)では模擬試料を用いたラウンドロビンテストにより回収率は40~80%の範囲。
※4
木粉とにぼしの等量混合物を供試し、前処理後の回収残渣のTOCから除去率を算定。
※5
木粉とにぼしの等量混合物に既知量のMP(1種毎)を添加した試料の、前処理後の回収残渣のTOCから回収率を算定。

関連技術情報のご案内

東レテクノは、標準的分析法で課題となっていた、長時間の煩雑かつ作業者の熟練度に左右されるMP抽出のための前処理工程を改善すべく、2種類の薬液を用いた天然有機物の選択的除去法を考案し、効率的かつ迅速なMP抽出手法であるRAT-MP (Rapid Analysis Technique of MicroPlastic) 法を開発しました。
東レテクノ技術資料(外部サイト):マイクロプラスチック(MP)の迅速定量 -効率的な前処理とTOCによる総量把握-
東レリサーチセンター/東レテクノでは、高度な技術と確かな実績で、マイクロプラスチックに関する調査・分析・試験・測定等、各種評価の実施により、お客様の問題・課題解決の支援対応が可能です。ぜひご依頼を検討ください。ご不明な点などございましたらお問い合わせをお待ちしております。