太陽電池は、屋外で20年以上に渡って使用されることが想定されています。このように長期の信頼性・耐久性を確保するためには、モジュールに多数用いられる高分子材料の封止部材にも高い耐久性・信頼性が求められ、それらの評価も非常に重要になります。
太陽電池モジュールの構成
太陽電池モジュールとは、半導体を用いた太陽電池セルを複数配置し、周囲の環境に耐えられるように支持板(ガラス板など)、充填材(封止材)、裏面材(バックシート)を用いて封止した後、全体の強度をもたせるために外枠をはめ、シールしたものです。太陽電池モジュールの代表な構造を図示しました。このように様々な材料で構成されていますので、各部材にはそれぞれの性能評価が必要になります。

充填材(封止材)
封止材に使用されている材料としては、EVA(エチレン酢酸ビニル共重合樹脂)が代表的です。加熱・加圧することで、太陽電池セル、ガラス、バックシートと接着させています。
封止材には、透明性や柔軟性のほか、接着性、引張強度、耐候性などが要求されるため各種の添加剤が配合されるのが一般的です。
裏面材(バックシート)
バックシートは、太陽電池セルを封止後、封止材と接着されます。バックシートは直接屋外に暴露されるため、耐候性(耐UV光、耐湿、耐熱、耐塩害等)、水蒸気バリア性、電気絶縁性、機械的特性(引張強度、伸び、引裂き強度等)、耐薬品性、封止材との接着性などが要求されます。これらの要求に応えるため、バックシートは様々な性能をもつフィルム(PVF、PETなど)を多積層させたものとなっています。
シール材
シール材は、太陽電池モジュールとフレームの間や、端子ボックスを装着する際に、固定と結露防止を目的として用いられます。ある程度の弾力性と水蒸気バリア性、接着性などが求められ、ブチルゴムやシリコーンゴムなどが使用されていますが、1つの材料では要求特性を満たすことが難しいため、複数の材料を組み合わせて用いる場合も多いです。
封止部材の劣化
上記の封止部材は高分子材料であるため、長期の屋外の使用により経年劣化を生じます。
モジュールの黄変(着色)、白濁(剥離)による光透過率低下、ガラス-封止材間、封止材-バックシート間の剥離、バックシートのこげ、膨れ(電流による発熱、電圧による接合破壊の影響)、電極の腐食とそれに伴う封止材の劣化などいろいろな劣化が挙げられますが、これらの原因究明や劣化評価に当社の分析評価技術がお役に立ちます。
太陽電池封止材の分析メニュー
目的 | 評価項目 | 分析手法 |
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基本物性 | 寸法安定性 | 熱収縮率測定 |
破断強伸度 | 引張試験 | |
層間ラミ強度、密着性 | ピール試験 | |
硬度(フィルム) | ナノインデンテーション | |
熱・機械特性 | 動的粘弾性、示差走査熱量分析(DSC) | |
水蒸気バリア性 | 水蒸気透過率測定 | |
各種ガスバリア性 | 各種ガス透過率測定 | |
透明性 | 可視光透過率測定 | |
屈折率 | 分光エリプソメトリ | |
組成分析・層構成 | 高分子の構造解析 | フーリエ変換赤外分光(FT-IR)、核磁気共鳴(NMR) |
断面/平面の形態解析 | 走査電子顕微鏡(SEM)、透過電子顕微鏡(TEM)、 電子線プローブマイクロアナライザー(EPMA)、 FT-IR |
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酢酸含有量(EVA) | イオンクロマトグラフ(IC) | |
架橋の進行度合い(EVA) | 動的粘弾性、ゲル浸透クロマトグラフ(GPC)、 固体NMR |
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耐候(光)性 | 黄変評価 | YI測定、紫外可視分光(UV-Vis)、FT-IR、 高速液体クロマトグラフ/質量分析(LC/MS) |
構造変化 | FT-IR、NMR、X線光電子分光(XPS) | |
架橋度 | ゲル分率(浸漬法)、固体NMR | |
分子量分布(低分子量化) | GPC | |
添加剤 | UV-Vis、LC/MS、FT-IR | |
ラジカル | 高速液体クロマトグラフ/紫外分光(LC/UV)、 高速液体クロマトグラフ/蒸発光散乱検出(LC/ELSD)、 電子スピン共鳴(ESR) |
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剥離界面 | 断面SEM、EPMA、XPS、FT-IR |