バイオアナリシス(生体試料中薬物濃度測定)

医薬品の研究開発では、その有効性や安全性を評価するために薬物動態を把握することが重要かつ不可欠です。ヒトや動物に投与される薬物は、体内に吸収されると各組織に分布し、代謝を受けた後、体外に排泄されます。この一連の過程(薬物動態)を把握するため、薬物や代謝物の血中や尿中濃度を正確に定量することが求められています。東レリサーチセンターでは、血液、尿及び種々の組織中の薬物濃度測定(TK測定、PK測定)について、低分子医薬品のみならず、抗体医薬、核酸、ペプチド、抗体薬物複合体(ADC)等の新しいモダリティにも対応しています。

また、医薬品の研究開発の効率を高めるため、前臨床・臨床試験等の各ステージでのバイオマーカー研究が加速しています。東レリサーチセンターでは、生体試料中の薬物濃度測定で培った経験を活かし、多種類のバイオマーカーの測定法開発にも取り組んでいます。

分析法バリデーション

LC/MS/MS(三連四重極、Orbitrap)、GC/MS、HPLCを用いて、生体試料中の超微量な薬物及び代謝物の定量法を確立します。また、抗体医薬、抗体薬物複合体(ADC)、核酸、細胞医薬等の新しいモダリティに対しては、経験豊かな担当者がLBA(リガンドバインディングアッセイ︓ ELISA、ECL)や細胞アッセイで対応します。分析法バリデーションはICH M10ガイドラインや、各局のバイオアナリシスのガイドライン・ガイダンスなどの各種規制下で迅速に実施します。

前臨床・臨床段階における薬物・代謝物等濃度測定

薬物動態試験、安全性試験や臨床試験で採取された検体(例えば血液や尿)に含まれる薬物及び代謝物の濃度をGLP省令や信頼性の基準に従って、正確に定量します。
[GLP適合性調査:医薬品GLP提供試験等の一部受託(トキシコキネティクス測定)評価結果:適合 令和元年12月26日]

タンパク結合率測定

⾎液中の薬物は、タンパク質と結合した状態(結合型薬物)と結合していない状態(⾮結合型薬物)で存在します。タンパク結合率の⾼い薬物は、結合率のわずかな変動で⾎液中の⾮結合型薬物濃度が⼤きく変化し、薬効や毒性(副作用)の発現に⼤きな影響を与える可能性があります。東レリサーチセンターでは、限外ろ過法、超遠⼼法やデバイスを⽤いた平衡透析法により薬物のタンパク結合率を評価します。

相互作用解析

薬物の血中タンパク質結合性は、体内動態や薬効、毒性に影響を与えることから、医薬品の探索や開発を通じて評価しなければならない重要な項目です。東レリサーチセンターでは、SPRを利用した速度論的な評価に加え、熱力学的評価が可能なITC、原子レベルで薬物の結合部位を評価するNMR、非変性条件下でストイキオメトリーから評価するMSなどのサービスを提供しています。

抗薬物抗体測定

バイオ医薬品は、動物やヒトに投与すると異物と認識されることで免疫反応が生じ、抗薬物抗体が産生されることがあります。産生された抗薬物抗体が中和活性(バイオ医薬品の薬効を打ち消す作用)をもったり、投与されたバイオ医薬品の薬物動態を変化させたりすると、有効性や安全性に影響を及ぼす可能性があるため、抗薬物抗体に関する測定は重要です。東レリサーチセンターでは、抗薬物抗体の測定をLBA(ELISAやECL)により行います。

バイオ医薬品関連試験

抗薬物抗体測定

バイオ医薬品は、動物やヒトに投与すると異物と認識されることで免疫反応が生じ、抗薬物抗体が産生されることがあります。産生された抗薬物抗体が中和活性(バイオ医薬品の薬効を打ち消す作用)をもったり、投与されたバイオ医薬品の薬物動態を変化させたりすると、有効性や安全性に影響を及ぼす可能性があるため、抗薬物抗体に関する測定は重要です。東レリサーチセンターでは、抗薬物抗体の測定をLBA(ELISAやECL)により行います。

細胞アッセイ

ADCCおよびADCP活性の評価

細胞を⽤いた医薬品の⽣物活性評価の問い合わせは年々増加傾向にあります。東レリサーチセンターでは、プロメガ社との間において、ADCCおよびADCP活性評価を比較的簡便に行うことが可能な細胞アッセイキットの使用ライセンス契約を締結しており、医薬品の申請資料の⼀部となる試験を⾏っております。

中和抗体測定

抗薬物抗体の中和抗体は医薬品の薬理作用を中和させます。FDAガイダンスでは、中和活性測定を細胞アッセイで実施することが推奨されており、東レリサーチセンターでは各種規制下で細胞を使用した試験を行っております。

リアルタイムPCR

リアルタイムPCR法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNAの増幅をリアルタイムに測定することで、鋳型となるDNAの定量を行う⽅法です。7500 Fast Real-Time PCR Systemを導⼊して、ハイブリダイゼーション法として最も⼀般的に⽤いられるTaqMan®プローブ法を⽤いた分析サービスを提供しています。

分析メニュー

バイオアナリシス等の分析メニュー

項目 手法 評価項目
分析法の開発 LC/MS/MS
GC/MS
HPLC
選択性
検量線及び定量範囲
真度及び精度等
LBA 抗体の特異性
選択性
検量線及び定量範囲
真度及び精度
必要に応じて、抗体や二次抗体の安定性等
分析法バリデーション LC/MS/MS
GC/MS
HPLC
選択性
特異性
マトリックス効果
検量線及び定量範囲
真度及び精度
キャリーオーバー
希釈の妥当性
安定性
注入再現精度等
LBA 特異性
選択性
検量線及び定量範囲
真度及び精度
キャリーオーバー
希釈直線性とフック効果
安定性等
TK・PK測定 LC/MS/MS
GC/MS
HPLC
LBA
医薬品の濃度測定(GLP)
内因性物質(バイオマーカー)
薬物動態解析
タンパク結合率 限外ろ過法
超遠心法
平衡透析法
タンパク結合型薬物濃度
非結合型薬物濃度
タンパク結合率
抗体価の測定 LBA 抗体価
抗薬物抗体測定
(ADA測定)
LBA 抗薬物抗体測定
中和抗体測定 LBA
セルベースアッセイ
中和抗体測定
代謝物検索 LC/MS/MS 代謝物の構造推定
in vitro ADME
スクリーニング
生化学的手法 細胞透過性
代謝反応性
代謝阻害活性

LBA: ELISA、ECL等

リアルタイムPCRの分析メニュー

項目 分析対象 手法
mRNAの定量 mRNA Total RNA抽出
cDNA合成
TaqMan®プローブ法
(絶対定量・相対定量)
残留DNAの測定 DNA DNA 抽出
TaqMan®プローブ法
(絶対定量)
核酸医薬品の定量 RNAもしくはDNA DNAもしくはRNA抽出
TaqMan®プローブ法
(絶対定量)
バイオマーカー microRNA エキソソーム抽出
small RNAを含むTotal
RNA抽出
配列特異的逆転写
TaqMan®プローブ法
(相対定量)